三國正樹氏のピアノコンサートに行ってきました。(いつものことながら)ベートーヴェン後期ピアノソナタがプログラムだったからです。
私は、三國氏のことをまったく知りませんでしたが、素晴らしいピアニストと感じました。
各パッセージへの性格付けが明瞭でありながら、硬くなることもなく、微妙なニュアンスのものは微妙に、力強いニュアンスのものは力強く、
また、両手の各ラインが双方生きて聴こえ、対位法的な効果を私のような素人にも掴み易く、決して団子にすることなく聴かせてくれました。
言葉で書くと簡単に聞こえそうですが、楽譜に対する分析と、才能に訓練を積み重ね、
まるで“ピアノのハンマーそのもの”のように見えた指運ができるいからこそ始めて可能になることだと思います。
ただ、少し残念だったのは、小さなホールでピアノのダイレクトな音が聞こえる反面、観客の出すノイズがピアニストに届きやすい所で
わずかですが、(〜付き合いで来たが音楽にあまり興味なさそう〜)な態度のお客さんがいて、演奏中にパンフをめくる・落とすなどノイズ出しまくり。
30番はほぼ完ぺきに弾かれた三國氏でしたが、観客のノイズが続くうちに集中力が途切れたのか31番の3楽章のフーガで小さなミスをし、
それを始めとして、演奏にわずかながらブレが生じて集中力を欠くようになっていったように思えました。
それは、休憩をはさんだ後の32番でも残っていたように感じられ、アリエッタも素晴らしい演奏が期待できたにもかかわらず、
“悪くない”といったレベル評価になってしまいました。
是非とも、前半の冷静でコントローラブルな演奏で三國氏の32番を聴いてみたいと思い、後日CDを探したのですが、
32番のCDどころか、三國氏のCDでヒットしたのは1枚だけでした。
あの実力で、CD1枚しか出していないとは・・・。音楽業界も見る目がないなぁ・・・と。ぜひ後期ソナタのCDを制作してほしいです。